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東灘区と文学のつながり
東灘区の歴史
海・山・川と自然環境に恵まれ、落ち着きある街並みの東灘区。数多くの文学作品の舞台として登場しています。ここでは3作品を紹介。現地を訪れれば作品をより身近に感じることができます。
岡本南公園は『櫻守』のモデルとなった笹部新太郎の邸宅跡
阪急岡本駅の北側にある「岡本公園」周辺はかつて、「梅は岡本、桜は吉野、みかん紀の国、栗丹波」とうたわれた岡本梅林。江戸時代の梅見のにぎわいは『摂津名所図絵』にも描かれており、多くの人々が訪れる名所でした。
「岡本公園」の南に位置する「岡本南公園(桜守公園)」は、水上勉の小説『櫻守』のモデルとなった笹部新太郎の邸宅跡。いまもササベザクラ、エドヒガン、オカモトザクラなどが植えられ、春になるとすばらしい桜景色を楽しむことができます。
『櫻守』は、桜にすべての私財と情熱をささげた実在の人物・笹部新太郎の業績を、同じく桜に情熱を注ぐ庭師の眼を通して描いたもので、失われつつある日本の美への哀惜が、美しい言葉で綴られています。
住所:神戸市東灘区岡本5丁目6-16
『火垂るの墓』の兄妹が母に会うために目指した御影公会堂
野坂昭如の小説や同名のアニメ映画で知られる『火垂るの墓』は、野坂自身の戦争体験を題材とした作品。神戸や西宮近郊を舞台に、親を亡くした14歳の兄と4歳の妹が終戦前後の混乱のなかを必死で生き抜こうとする姿を描いた悲劇の物語です。
映画では、空襲警報が発令したときに心臓を患う母親が先に防空壕へ向かい、その後、兄の清太は妹の節子を背負って御影町上中・上西(現在は御影本町6丁目・8丁目)の自宅から避難します。二人は阪神電車の高架下まで来ますが避難者が多くて身動きが取れないため、引き返して浜の方へ出ました。
石屋川沿いに御影公会堂方面を目指す兄と妹。堤防を上がって清太が目にしたのは、一面が焼け野原と化した街並みでした。二人は母親との待ち合わせ場所、御影公会堂の裏手にある二本松に向かいました。
住所:神戸市東灘区御影石町4丁目4-1
谷崎潤一郎が女性4人と暮らし、『細雪』を執筆した倚松庵
関東大震災の後、地震を避けて関西に移転してきた谷崎潤一郎は、京都や阪神間で転居を繰り返しました。東灘では岡本梅林近くや住吉、魚崎などに住み、多くの作品を執筆。
関西に移住して谷崎文学が開花したのは、松子夫人との出会いがあったからと言われています。松子夫人の妹の重子と信子、松子夫人の娘の恵美子という女性4人と谷崎潤一郎の生活が行われた「倚松庵(いしょうあん)」は小説『細雪』の舞台となりました。
住吉東町1丁目にある「倚松庵」は谷崎が1936年から1943年まで住んでいた住居で、現在地から南へ150mの場所にありました。現在では著書や参考文献などを集めた「谷崎文庫」が併設されており、谷崎文学の世界に触れることができます。
住所:神戸市東灘区住吉東町1丁目6-50